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春季キャンプコラム

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2023.02.22
投手王国の予感
2月18日(土)~2月21日(火)第5クール

実戦段階が進む沖縄。真剣勝負の中で収獲と課題が浮かび上がって来る。終盤にかかったキャンプ第5クールを振り返ろう。

進化する西純!抜群の仕上がり

18日(土)キャンプは、第5クールに入った。WBCへ向けた侍ジャパンの強化合宿参加のため湯浅と中野が抜けた一方、前クールから昇格していたドラフト1位・森下と藤田・中川の両捕手に加えて、富田・二保の2投手が宜野座に合流。島本・榮枝は具志川へ。当初の予告通り、シャッフルが行われた。

シーズン開幕戦の相手、横浜DeNAとの練習試合は、阪神・才木とDeNA・上茶谷の先発で始まる。大山・佐藤輝らは出場せず、クリーンアップには髙山・ミエセス・原口が並んだ。才木は初回先頭・森に中前安打を浴びるも次の関根を遊ゴロ併殺に取りリズムを作ると、その後も危なげなく3回(22球)を投げて2安打1三振無四球無失点と上々の内容だった。

打線は3回裏無死1・2塁からフォークを上手く拾った9番・小幡の中前適時安打で先制。その後、2番・糸原の中前適時安打で2点目を奪った。リードをもらった投手陣は才木の後、浜地~加治屋を挟んで6回からは西純が3回(38球)を無安打3三振無四球無失点。抜群の内容を見せている。8回までDeNA打線をゼロに抑えて完封目前だったが、9回表5人目・岡留が死球・暴投・四球と大乱調で走者を背負うと急遽登板した左腕・岩田も二死から3番・蝦名に右中間へ同点2点適時二塁打を許し、土壇場で追いつかれてしまう。その裏阪神は二死満塁の好機に一打が出ず、プレ開幕戦は2対2の引分けに終わった。

「チェンジアップ、カーブ以外は狙い通り投げる事が出来た。特に真っ直ぐでも空振りを取れたので、低めにしっかり投げていけたというのは凄く良かった」。最初に失策の走者は許したものの、その後は全く相手を寄せつけなかった西純矢投手が手応えを語った。「自分の投げたい球を優先させて貰って(梅野さんからも)良かったと言ってもらえて。新しい組立てとか出来たんじゃないかなと思っている」。課題については、「まだまだ、蝦名さんの遊ゴロとか。インコース使ってるからこそ遊ゴロだったけど、危なかったかなというのが何個かあるので、もうちょっと精度を上げて行けるようにしたい」と話す。投げる度に凄みを増す右腕。「(どのカードに投げたいとか)全然こだわりはない。開幕ローテに入れるよう、しっかりアピールして行きたい」西純の照準がブレる事は無さそうだ。

「(バッテリーを組んだ4投手は)素晴らしい仕上がり。カウントが進む事によって、球種であったり、色んなところの選択も出来たし。入り球とか結果球、実戦の中で皆そのパフォーマンスを出してくれたんじゃないかと思う」。8回までマスクを被って投手戦を演出した司令塔・梅野隆太郎捕手は、投手陣の仕上がり具合に満足そうだった。4回表には浜地が出した走者・森の盗塁を阻止。打撃でも左前安打、死球、四球の結果だったが、内容も含めて実戦感覚が戻って来た事を喜んでいる。

オレより数段上!

19日(日)前日DeNA戦前のフリー打撃で左足に自打球を当てた痛みが引かない為、ミエセスが別メニュー調整に回った。かつて阪神でも守護神として君臨した呉昇桓投手が所属する韓国サムスン・ライオンズとの練習試合には、大山・佐藤輝が出場。

今季から先発に復帰する岩貞がスターターとして試合が始まる。岩貞は立ち上がりからリズムよく2回まで投げて4奪三振など無安打無失点に抑える。2人目の左腕・大竹も3イニングを1安打無失点と安定感を示した。阪神は3回裏一死9番・木浪の右中間三塁打の後、1番近本が右越え適時二塁打を放ち先取点を奪う。4回に佐藤輝・渡辺諒の長短打と7番・井上の犠飛で追加点。7回裏には佐藤輝の中越え2点適時二塁打や井上の左越え満塁本塁打などで大量8点を追加して勝負を決めた。10対0という大勝の中で、小幡と遊撃を争う木浪は長打3本を含む4安打の乱れ打ち。途中出場・森下もタイムリーを含む初のマルチ安打と大いにアピールしている。

「久しぶりに先発をさせて貰って、ちょっとソワソワしたというか…。それでも、しっかり初回ゼロから入れたので良かった」。新背番号14を着けての初先発に岩貞祐太投手は、安堵の笑顔を見せる。

「スタメンで初球から行こうと思った中で対応出来た満塁本塁打だった」。グランドスラムを含む5打点と派手な活躍だった井上広大外野手が胸を張る。他の打者がどのように対応しているかを見極めた上で「しっかりミートする為に擦り足で対応した」と説明していた。

「レギュラーで試合に出るんやったら、速いストレートを一発で仕留めてくれたら言うことないけどな。本塁打2本打ったけど、2本共変化球やから、その辺やな」。岡田彰布監督は、井上の活躍にもより高い注文をつけた。

試合に出る度に評価が上がるルーキー森下について「予測は上回ってる。オレが入った時より数段上や。新人の時よりも、な!」。ドラフトで6球団競合の末、超大物スラッガーとして入団した指揮官だけに、この賛辞は並ではないだろう。

岩貞・大竹のローテ候補も好投して、先発投手候補は前クールの楽天戦を合わせて実戦3試合で一通り出揃った感があるが、「そうやな。みんな、ある程度結果出してくれてるからな。まぁ、予定通り投げてくれてる感じやな」と話した。

岩崎、貫禄の試運転

20日(月)宜野座では、シート打撃に岩崎とB・ケラー、K・ケラー、ビーズリーの4投手が登板した。

「まあこれ位かな、という内容だった。もう少しコーナーの投げ分けなどが必要。変化球は投げ始めなので、まだまだ。ここからしっかり間に合わせます」。今キャンプ初めて実戦形式で投げた岩崎優投手は、打者6人に対してヒット性1本。ややバラつきがあったが、ルーキー森下には内角球で詰まらせバットをへし折ってみせるなど、貫禄の投球だった。

最もハイレベルな遊撃争い

21日(火)「ようやく実戦が始まって。でも次のクールでまだ3試合あるんでね。セ・リーグ相手もあるし、そういう意味では次からじゃないかな」。岡田彰布監督が、第5クールを総括した。若手先発候補の有望株である才木と西純については、「プルペンから見てても、ある程度投げられる感じはあると思う。当然ローテーションで。若いし、故障とかもあったけど、それも大丈夫みたいだし、1年間ローテーションを守ってほしい若手の2人なんで。順調に来てると思う」と話す。

中継ぎ陣も層が厚い。「加治屋はある程度ソフトバンクの時から実績があったけど、石井が本当にこのあいだも良い投球を見せてくれて。外国人2人、後ろ、ブルペンにいるんだけど、全然引けを取らない投球をしてくれたんで」と、頼もしい存在になりつつある。

そして、野手では木浪の活躍が際立っていた。「打たんでもイイと言うてたんやけど…まず守備からと言うのがあったんやけど、木浪は去年11月のキャンプから、やっぱり一度レギュラーポジション獲ったというか、そう言う選手なので。小幡を含めて2人は凄くチャンスだと思うんでね。まぁ、一番高いレベルで競争し合ってるんじゃないかな。ショートはね」。

最終クールを残して外国人選手の調整遅れが少々気になるところはあるが、全体的には大きな躓きもなく、すこぶる順調だと言える。いよいよ週末には、オープン戦開始。岡田阪神が、キャンプの総仕上げに入って行く。