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春季キャンプコラム

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2024.02.15
ケイン颯爽!衝撃デビュー
2月9日(火)~2月14日(水)第3クール

キャンプは中盤に差し掛かり、合同紅白戦で実戦段階へと移行した。ますますヒートアップの第3クールを振り返る。

「やっと野球が出来る」

10日(土)第3クールに突入。前2クールでしっかり土台を作った選手たちが、サバイバルを懸けた実戦段階を迎える。

宜野座では、1月に左肩のガングリオン(良性腫瘍)除去手術を受けた大竹が、プルペンで変化球を交えて33球の術後初めて本格投球を行った。現役ドラフトで移籍した昨季はチーム最多13勝をマークしたが、今年はリハビリからの始動となって「陸上部みたいな」練習に明け暮れただけに「やっと野球が出来る」という喜びが湧き上がる。「一年間投げられなかったらどうしよう」との不安をポジティブ思考に転換してトレーニングを積んで来た。

「本当に一日一日良くなっている。横這いだとちょっと不安にもなるけど。凄く改善して行っているので、しっかり開幕には間に合うんじゃないかと思う」。1年前とは立場も責任も全く違う左腕は、焦らず徐々に状態を上げていく。

未完の左腕が片鱗

11日(日・祝)建国記念の日。ファン待望の紅白戦が始まった。紅組1番佐藤輝をはじめ選手の希望で打順を決める異例のオーダーで臨む注目の一戦。具志川組も参戦する事に加えて、高卒2年目の門別・茨木が先発を務めるという意味でもワクワクするような最初の実戦となった。

「終始力んでいた」。初回は不運な安打と失策絡みで失点した門別啓人投手だが、2回表は近本・木浪・ノイジーの主力打者を直球主体の投球でねじ伏せる。2回(39球)を投げて2安打2三振無四球無失点と上々の内容だった。1回表4番中野との勝負ではオール直球で挑み、再三粘られるも11球目外角低めで空振り三振に仕留める。スケールの大きさを感じさせる場面だった。この日は真っ直ぐに拘ったが、「これからの実戦では、駆け引きも大事にしたい」と話す未完の19歳左腕。大物の片鱗を見せて、大ブレイクへの扉が開かれた。

2回裏には、死球の坂本を一塁においてミエセスが茨木の内角直球を捉えて左翼席へチーム一番乗りの勝越し2点本塁打を放ち、外野芝生席まで人で埋まった超満員のファンを大いに喜ばせる。

3回表紅組は成長株の3番野口が西純から左前適時打を放って反撃に転じる。初回のチャンスでは門別の速球にあと一押し届かない最深部の中飛に終わっていたが、積極的な姿勢がアピールに繋がったカタチだ。

ファーム組から参加した高校生ルーキー山田は、6回裏三遊間最深部のゴロを見事に捌く好守備を披露。同じく途中からショートを守った百崎も前進守備から走者の本塁突入を阻止するなど若虎が初実戦で溌剌とした動きを見せている。

試合は5対4で紅組が勝利。その中で3年目の前川右京外野手は4安打と気を吐いた。「2本ポテン(ヒット)とかあったけど、それ以外の打席は内容良く行けたかな、と思う。(最終打席の右前安打は)速いストレートのインコースをしっかり回れたので良かった」。今キャンプでは、「イイ感じに間も出来て来てるので。(あとは)ボールとの距離を取って」と充実感いっぱいだ。「(結果が良くても)その日が終わったらまたゼロからのスタートなので。そう言った気持ちで毎日過ごしたいなと思っている」。今季はやらなくてはいけないという覚悟が滲み出るコメントだった。

方向性は間違ってない

12日(月・振)、この日の紅白戦には、体調不良から復帰の梅野が実戦初出場。才木・秋山の先発で試合が始まる。初回白組は、1番佐藤輝が秋山から右越えに先頭打者アーチを放ち先制した。「しっかり高めの球を強く叩けたので良かった。練習でやってる方向性が間違ってないのかな、というのはこの実戦で感じられた」。 佐藤輝明内野手は、打撃フォーム改造の手応えを口にしている。

白組先発・才木浩人投手は1回(11球)を三者凡退で無安打無失点と無難な試運転。「殆ど真っ直ぐで押せてたし感触としてはボチボチかな」と振り返る。フォークは今一つだったようだが、「(1月下旬の体調不良で)スタートがちょっと遅れちゃったんだけど、あんまり焦らず、プルペンで投げ過ぎないようにだけ気をつけているんで」。徐々に状態を上げていく方針を示していた。

試合は2対2の引分け。その中で育成2位ルーキー福島が、スペシャルな快足を軸に攻守で首脳陣の心を掴んだ。前日に続く2試合連続の適時打にシートノックで見せるカットマンまでの強い返球。極み付きは、赤星臨時コーチをも唸らせるスピードだ。特別ルールで代走起用の7回裏、クイックが速い佐藤蓮から初球スタートで二盗を決める。素早いスライディングも大きな魅力である。

「ええ足しとるで!走る姿(を見るのは)初めてや」。朝のミーティングで次のクールから糸原・原口と共に一軍に昇格させる事を決めたと言う岡田彰布監督が、目を細めた。「経験積ませたらええやん。代走から出て守備固めでもええんやからな。(早期支配下登録の)可能性あると思うよ。スカウトが見た以上思った以上に中入ったらええ選手言うのは、そらおるよ。何より(俊足という)武器があるというのは凄いわ。それは生かさんと、チームとしてな!」。

前日は内野安打で出塁も盗塁する事が出来なかった福島圭音外野手。「もう行くって。決めてたので。細かい事気にしないで…チャンス貰ったので!」強い気持ちで臨んだ。「今、赤星さんに言われた事を継続してるけど、大学でやって来たクセが抜け切らなくて」と連日必死に取り組んでいる。背番号126から早く支配下へ!「育成で指名されたところから、それは考えている。(一軍には)近本さんとか凄い先輩がいるので、どんどんどんどん吸収して行きたい」。圭音という名前は、母が俳優ケイン・コスギのファンだった事に由来する。虎のアクションスターになるべく、福島がサクセスストーリーの表舞台へと近づいた。

軽快にゲラ!投内連係

13日(火)第3クール4日目。ランチタイム特打に昨季新人王&MVPの村上が登板した。「初めて打者になげたし、プルペンと違うマウンドだったので。良い感じで投げる事が出来たので、それは良かったと思う」。野口・小幡を相手に変化球も交え40球。売り出し中の野口にはカーブを叩かれ左越え本塁打を浴びたものの、初の実戦形式で上々の感触を口にしている。

今季のテーマとしては、真っ直ぐの質向上と平均スピードを上げる事を意識している。「2ケタ勝利ともう一度防御率のタイトルを獲りたい」思いと共に、開幕投手に関しても「狙って行きたい場所ではあるし、やってみたい気持ちも強い」と意欲を示した。

投内連係では、新外国人ゲラが軽快な動きを見せた。元遊撃手だけあって牽制やバント処理も機敏にこなす。「何事もしっかり準備が出来ていれば決して難しい事はないと思ってるよ」。ハビー・ゲラ投手はこともなげに話した。プルペンでは45球を投じたが、「スライダーというか、カットが良かった。大体低めに集まっていたね。そんな遠くない内に打者に投げたい気持ちはあるよ」と実戦に向けて調整が進んでいる事を示唆している。

14日(水)バレンタインデーがクールの締め括りとなった。そろそろ選手の疲れもピークに近づいている中で、対外試合が始まり実戦中心となるキャンプ後半を前に英気を養う意味でも、宜野座では全体メニューを昼過ぎまでとして早めに切り上げる。

「新人の選手とかも、なかなかこの時期は見れないんだけど。良いのを見せてもらったと思ってる」。クール総括で、一軍・ファームの合同紅白戦の意義を改めて岡田彰布監督が口にする。球速を気にしてピリッとしない投球を見せた湯浅には敢えて苦言を呈した指揮官だが、多くの若手が台頭するなど収獲満載の内容には確かな手応えがある。中でも育成ルーキー福島を次のクールから宜野座メンバーに呼ぶ事には、「他の選手にも刺激になると思うけど、これはもう大抜擢」と認めている。

キャンプは折り返し点。いよいよ練習試合やオープン戦など実戦中心の後半へ。メンバーのシャッフルも頻繁に行われる見込みで、王者のサバイバルレースが激しさを増して行く。