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現役生活を締めくくる魂の12球

冷たい風の吹く11月の甲子園。順位はすでに確定しているがチケットは前売りで完売していた。理由はもちろん"火の玉ストレート"を武器に活躍した藤川の引退試合だからだ。

偉大な投手の引退試合を勝利で飾るべく青柳は気合いを入れて先発マウンドに上がったが、守備の乱れもあり初回に3失点。それでも2回以降は立ち直り、追加点を与えることなく5回までマウンドを守った。しっかりイニングを投げたことで2年連続規定投球回に到達、来季も安定感を増した投球で先発ローテーションの一角を担ってくれるに違いない。

援護したい打線は6回に近本の放った痛烈な打球を相手野手が弾き、チーム初安打かと思われたが記録は失策。矢野監督は本塁打王のタイトル獲得の可能性を残す大山に少しでも多くの打席を与えるため1番で起用したがこちらも不発。攻撃面での盛り上がりには欠けたが9回、藤川の名前がコールされると今季最多となる2万1392人の観衆が沸いた。

慣れ親しんだ9回のマウンドに上がったかつての絶対的守護神は148キロのストレートで坂本を空振り三振。続く中島に対しては149キロを計測しやはり三振に仕留める。時には振りかぶり全球ストレート勝負、魂の込もった12球で三者凡退に抑え背番号と同じ22年間に及ぶ現役生活を締めくくった。

試合後に行われた引退セレモニーでは「僕の投げる火の玉ストレートには甲子園のライトスタンドの大応援団の皆様、チームの思い、そしてタイガースファンの熱い思いが全て詰まってます。それが皆さんの知る火の玉ストレートの投げ方です。それは打たれるはずがありません。野球選手、藤川球児というのは皆様の気持ちの塊だったんだと思います。ファンの皆様にとって僕の存在が誇りというのならば、僕にとってもファンの皆様が誇りです。その気持ちをこれからは後輩たちに一緒に送り続けましょう」とスピーチした。この生き様は後輩たちに受け継がれていく。藤川の最後の勇姿を目に焼き付け、明日の今季最終戦は藤浪が先発する。